2「フランスでもただ事じゃなくなってきたね」
こんにちは、サヨコです。
今回は前回の記事の続きです。
続きはこちら。
2020年3月上旬
COVID-19と呼ばれる新型コロナウイルス(以下コロナ)の脅威が迫る。
アジア系差別が目につくようになった。
学校でも大学閉鎖の噂が流れるようになった。
コロナが他人事ではなくなってきた。
2020年3月11日(水)
彼氏のラインが素っ気なくなってきたので、仕事が忙しいせいかと思い様子を聞くと「ぼちぼちかな」の一言のみ。
2020年3月12日(木)
コロナの影響で大学閉鎖の噂が学生の間でずっと囁かれる。
午後L教授のもとに博士研究の提携先のシャトーと学長のサインがされた契約書がメールで送られる。
いつ大学が閉まるかわからなかったので、その日は実験はキリの良いところまで進め翌日は博士の登録のための書類の準備をすることにした。
流石に心細くなり、日本時間朝7時に彼氏に電話しても出ず「家を出ていて出れなかった」という返事だけされ、折り返しの電話も「大丈夫か」の一言も無し。
いよいよ嫌な予感がし、週末に電話の約束を取り付ける。
フランス時間20時にマクロン大統領の会見があり、翌週3月16日月曜日から幼稚園から大学までの全ての学校を閉鎖することに。
2020年3月13日(金)
実験を区切りの良いところまでさっさと進め、博士の登録の準備に取り掛かった。
翌週月曜日から大学閉鎖なので1分1秒が惜しい。
彼氏とのことでモヤモヤし半泣きになりながらも、書類にサインをもらいに色々な人たちのところへ走り回った。
博士3年を終えた後のキャリアの展望を書く書類もあったが、正直真面目に考える余裕は全くなかった。
フランス時間22時頃にボルドー大学から、16日月曜日からは講義室は閉め、研究室など一部の施設は開ける予定だというメールを受け取る。
2020年3月14日(土)
CDDが3月末までで7日間の有給を消化する予定だったので、L教授に最終週に有給を消化して21日土曜日に飛行機で帰国したいとメールしたが、返事が来る前に21日ボルドー→東京の便を予約した。
ワイナリー関係のフランス人の友人らと一緒にChâteau Faugèresを見学する約束だったので、午前中はSaint-Émilion辺りに向かった。
研究ばかりでは視野が狭くなると、昨年のキリンのインターンシップで実感したのでフランスにいる間は積極的にワイナリー見学をしようと決意したばかりだった。
広大な葡萄畑や醸造施設に圧倒されている中、L教授からメールを受け取る。
「月曜は書類準備を終わらせよう。その後火曜以降はすぐに帰国した方が良い。もしフランスがイタリアと似た状況になり同じような措置を取るなら来週半ば、遅くとも週末には飛行機が飛ぶかどうかすら危うい。有給は今この状況で重要な問題ではない。」
その場の流れで見学したメンバーでレストランに行き昼食を取った。
美味しかった。
帰宅後インターネットでフライトを21日土曜日から17日火曜日に変更した。
10h20 ボルドー / 11h40 パリ・シャルルドゴール
13h15 パリ / 翌日9h10 東京・成田
という便で、トランジットも1時間半あるしスムーズに行けば待ち時間が少なくて済むものだ。
夜友人宅で友達の誕生日祝いをした。
そんな中、フランス政府から「本日24時からレストラン、バー、映画館などの娯楽施設を全て封鎖する」という発表があった。
フランスでもただ事じゃなくなってきたね、と言い合った。
外出規制もかかるらしいよという噂もこの時初めて聞く。
2020年3月15日(日)
彼氏と電話し、自分がモヤモヤしている気持ちを打ち明けるとあちらから別れ話を持ちかけられた。
遠距離で気持ちが離れたことを遠回しで言われる。
覆水盆に返らず、相手がそれを望むならとサヨナラを告げた。
あまりにも呆気なく終わった関係に号泣し、もはや部屋の掃除やパッキングどころではない。
23時ボルドー大学からメールが送られる。
「研究所含め大学の全施設を翌日月曜日から閉鎖する。自宅勤務のために必要な荷物を取りに来るなどやむを得ない場合は月曜日のみ特別に施設に入ることを許可する。」